地方都市の古びた雑居ビル。その3階にある、男女共用のトイレ。
それが、僕が一生忘れることのできない「屈辱と陶酔」の舞台だった。二十代半ばの僕は、お世辞にもモテるとは言えない人生を送ってきた。
地味な容姿に、女性と目を合わせるだけで吃ってしまう気弱な性格。その日も、苦手な会社の集まりに無理して参加し、気疲れからひどくお腹を下してしまった。
駆け込んだのは、フロアの隅にある古ぼけたトイレだった。男女の区別がなく、個室が二つと、その手前に手洗場があるだけの狭い空間。幸いにも奥の個室が空いており、僕は滑り込むようにして鍵を閉めた。
しばらくして、お腹の痛みがようやく落ち着いたときだった。パタパタと小気味いいヒールの音が響き、トイレのドアが開いた。
「もう、信じられない。あの人また自慢話ばっかり」
「わかる! 本当に時間の無駄だったよね」
心臓が跳ね上がった。同じ集まりに参加していた、会社の若くて華やかな女性社員二人組の声だった。
彼女たちは僕が個室にいることなど露知らず、手洗場の大きな鏡の前で化粧直しを始めたようだった。化粧ポーチを開けるファスナーの音や、スプレーの香りが、ドアの隙間から容赦なく流れ込んでくる。
(まずい、出られない……)
モテない男の悲しい習性で、「個室に僕がいる」と知られた瞬間の彼女たちの嫌悪に満ちた表情を想像し、完全に恐怖してしまった。
息を潜め、気配を殺す。だが、本当の試練はそこからだった。
「あ、ちょっと待って。私、ストッキング伝線しちゃった。穿き替えなきゃ」
そう言うと、なんと僕の隣の個室に一人が入ってきたのだ。そして、もう一人の女性は手洗場に残ったまま、個室のドアを開け放した状態で会話を続けた。薄い壁一枚を隔てたすぐ隣から、衣類が擦れ合う生々しい音が聞こえてくる。
カサカサというストッキングの包装を開けるプラスチックの音。続いて、彼女がスカートをたくし上げ、ショーツのゴムを指で引き下げる「パチン」という小さな、しかし致命的な音が静かなトイレに響いた。
(すぐ隣で、彼女が脱いでいる……)
一方で、僕はといえば、狭い個室の中でズボンと下着を膝まで下ろし、便座に腰掛けた完全な無防備状態。この壁の向こうには、いつも僕を「冴えない同僚」として一瞥もくれない洗練された女性たちがいて、彼女たちは完璧に服を着こなしている。「服を着た彼女たち」と「下半身を剥き出しにした僕」。
その圧倒的な非対称性と、すぐ傍で行われている「生々しい着替えの気配」が、僕の脳内をめちゃくちゃにかき乱した。
「う、嘘だろ……」
息を殺そうとすればするほど、心臓の鼓動が激しくなり、下半身にドクドクと熱い血が集まっていく。隣の個室からは、タイツを素肌に滑り込ませる「スルスル」という摩擦音と、生地を上に引き上げるための短い吐息が聞こえる。
彼女たちがいつも通り完璧に着飾っていくそのプロセスの影で、僕はズボンを下ろしたまま、情けなくもペニスをじわじわと硬化させていた。
もし今、個室の隙間からこの猛り狂ったモノを見られたら?
いつも僕を空気のように扱う彼女たちに、この無様な姿を見つけられ、「変態」「気持ち悪い」と蔑まれたら――。
その恐怖と羞恥の妄想が、強烈なスパイスとなって僕の理性を焼き切った。太ももの上で完全にいきり立ったペニスは、自分の意思とは裏腹に、トプンと先走りの汁を溢れさせている。
個室に充満する彼女たちの甘い香水の匂いと、隣から聞こえる衣類の擦れる音が、僕のペニスをさらに凶暴にのけぞらせた。我慢できず、僕は音を立てないよう細心の注意を払いながら、自身の熱い塊にそっと指先を這わせ、じわじわとストロークを始めてしまった。
「早く出ようよ、あそこ男の人たちタバコ臭いし」
「そうだね、行こ行こ。……よし、穿き替え完了!」
隣のドアが開き、彼女が服を整えて手洗場へと戻る気配。その瞬間、僕の興奮は最高潮に達した。
彼女たちが完全に服を着こなして外で談笑しているそのすぐ裏で、僕は下半身を剥き出しにしたまま、限界寸前のペニスを握り締めて震えている。
圧倒的な支配感と、なす術もない無力感。その快感の泥沼に溺れながら、僕は必死で絶頂を噛み殺した。
顔がカッと熱くなり、全身からじっとりとした汗が吹き出す。彼女たちが賑やかに去っていった後、静まり返ったトイレで、僕はしばらく動けなかった。
ようやく服を整えて外に出ると、手洗場の鏡に、見たこともないほど上気した情けない男の顔が映っていた。
モテない僕が味わった、人生で最も恥ずかしく、そして最も官能的な数分間の余韻が、今も下半身を熱く疼かせ続けていた。
最高のシチュエーションです///


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