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成長した従兄弟の身体を

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実家の自室を片付けていたとき、古いアルバムのページの間から、一枚のプリント写真がポロリと落ちた。
写っていたのは、田舎の祖母の家の庭で、大きなスイカを前にピースサインをする私と、その隣で口の周りを真っ赤に染めて笑っている、丸々と太った小さな男の子。

「レン、本当に変わらないなぁ……」

写真を見つめながら、私は小さく苦笑した。と同時に、胸の奥の引き出しが開き、あの狭いワンルームアパートで経験した、息が詰まるような気まずさと、今思い出しても頬が熱くなるような「あの夜」の記憶が鮮明に呼び覚まされた。

あれは私が大学二年生、二十歳になったばかりの秋のことだ。
当時、私は大学の近くにある、家賃4万円台の古いアパートで一人暮らしをしていた。狭いキッチンに、お風呂とトイレが一緒になった3点ユニットバス。そんな私の小さな城に、3歳年下の従兄弟の「レン」が泊まりにくることになった。

趣味の集まりで私の住む街にやってくることになり、「せっかくならチカ姉のところに泊めてもらいなさい」という叔母からの頼みを断れなかったのだ。

最後に会ったのは彼が小学生の頃だったから、数年ぶりの再会だった。子供の頃のレンは、いつも私の後ろをヨロヨロとついてくる、食いしん坊で泣き虫な、絵に描いたような「いじられキャラ」の男の子だった。

駅の改札口で待っていると、人混みの向こうから、大きめのエナメルバッグを重そうに肩にかけた男の子が歩いてきた。

「……あ、チカ姉。ひさしぶり」

声をかけてきたレンを見て、私は一瞬、言葉を失った。
数年ぶりの再会。少女漫画や小説なら「見違えるような高身長のイケメンに成長した幼馴染」との再会に胸を躍らせる場面かもしれない。しかし、目の前に立っているレンは、私の妄想を潔いほどに裏切ってくれた。

背は高校生になったというのに、160センチそこそこ。私とほとんど変わらない。
そして、子供の頃の「幼児体型」のままスライドしたかのように、ふっくらと丸みを帯びた小太りな体型。制服の学ランのボタンが、心なしか少し窮屈そうに引っ張られている。髪型もお世辞にもおしゃれとは言えない無造作な坊主頭が伸びたような感じで、クラスでもきっと目立たない、おとなしくてモテないタイプそのものの雰囲気を漂わせていた。

「レン、あんまり背伸びなかったね。相変わらず丸いし」
「ひどいな、一応これでも中学の時よりは伸びたんだよ……」

へへっ、と力なく笑う顔は、あの頃のレンそのものだった。
けれど、私の部屋に入り、彼が学ランを脱いでパーカー姿になったとき、私は言葉にできない奇妙な違和感を覚え始めていた。

確かに背は低いし、ぽっちゃりしている。
けれど、私の狭い部屋に座る彼の背中は、子供の頃のそれとは明らかに違っていた。
何というか、首の付け根から肩にかけての肉付きが、子供の「柔らかい脂肪」ではなく、どこかドシリとした、大人の男性特有の「重み」を感じさせたのだ。声も、かつての高いカン高い声ではなく、ガラガラとした低い濁音が混じる、完全な男の人の声になっていた。

夕食のコンビニ弁当を食べ終え、夜の11時を過ぎた頃。
「レン、先にお風呂入りなよ。狭いけど」と私は彼を促した。
私のアパートのお風呂は、絵に描いたような学生向けのユニットバスで、浴槽の中で足を伸ばすことなんて到底できない、本当に狭い空間だった。

「じゃあ、お先に失礼します……」
レンは照れくさそうに、着替えを持ってユニットバスへと消えていった。

彼が入浴を始めてから、15分ほどが経った頃だった。
お風呂場から、申し訳なさそうな、くぐもった声が聞こえてきた。

「あの、チカ姉……? ちょっといい?」
「ん? どうしたの?」
「シャンプー、これ、中身が入ってないみたいなんだけど……」

「あ、やってしまった」と私は心の中で叫んだ。
前日にボトルを使い切って、新しい詰め替え用のストックを洗面台の下の棚に置きっぱなしにしていたのを完全に忘れていたのだ。

「ごめんごめん! 今、新しいの渡すから待ってて!」

私は棚から新しいシャンプーのボトルを取り出すと、何の躊躇もなく、ユニットバスのプラスチック製のドアをガラガラと開けてしまった。
いつも一人で暮らしている気安さと、何より「レンは小さくてモテない、いつものレンだから大丈夫」という勝手な安心感が、私の警戒心を完全に麻痺させていたのだ。

湯気が一気に部屋へと溢れ出し、視界が白く染まる。
そして、その湯気の向こう側で、私は自分の犯した軽率さに、文字通り硬直することになった。

「はい、これシャンプー……」

差し出そうとした右手が、空中で止まった。

狭いユニットバスの中、レンは浴槽の縁に腰掛け、シャワーの温かい湯気に包まれていた。
私がドアを開けた瞬間、彼も驚いたようにこちらを振り返った。当然、彼は衣服を一切身にまとっていない。

そこにあったのは、私が知っている、ただの「太った可愛い男の子」の身体ではなかった。

確かに、お腹は少しぽっちゃりと出ている。背も低い。クラスの女子から「かっこいい」と黄色い声を浴びるような体型では、決してない。
けれど、そこに広がっていたのは、紛れもない「大人?の男の肉体」だった。

子供の頃の白くてすべすべしていた肌には、いつの間にか男の子特有の、濃い体毛がうっすらと生え揃っていた。丸みを帯びた肩の下にある二の腕は、脂肪の下にしっかりとした太い骨格が隠されているのが分かり、私の腕の倍以上の太さがあった。
湯気に濡れた首筋から胸元にかけて、ドクンドクンと大きな脈拍が打たれているのが見える。

背が低くて小太りだからこそ、その肉体の「密度」のようなものが、狭い空間の中で恐ろしいほどの生々しさを持って、私に迫ってきたのだ。

「……っ」

レンの顔が、みるみるうちにどす黒いほどの赤さに染まっていくのが分かった。
彼は慌てて手元にあった小さなタオルで前を隠し、背中を丸めて小さくなろうとした。
いつもなら、いじられキャラの彼らしく「ちょっとチカ姉! 何すんだよ!」と冗談めかして叫ぶはずだった。

けれど、彼は叫ばなかった。叫ぶ余裕すらなかったのだ。

濡れた前髪の隙間から、彼はじっと私を見つめていた。その瞳は、恥ずかしさと戸惑いで激しく揺れていたけれど、同時に、異性である私にすべてを見られたことに対する、男の子としての強烈なパニックと、生々しい「熱」を孕んでいた。
彼の厚い胸板が、激しい呼吸で上下する。狭い浴室の中に、彼の荒い息遣いと、熱い石鹸の匂いが充満していく。

私は、金縛りにあったように動けなかった。
「垢抜けない、モテない従兄弟」だと思って侮っていた彼の身体から、逃げ場のない「雄」としての気配が、ダイレクトに伝わってきたからだ。二十歳の私にとって、その小太りな身体に宿る小さな包茎の生々しさは、あまりにも刺激が強すぎた。

「あ……ごめん」

私は震える声でそれだけ言うと、床にシャンプーのボトルを置き、弾かれたようにドアを閉めた。

バタン、と閉まったドアの向こうで、しばらくシャワーの水音だけが響いていた。
私は部屋の真ん中で、自分の心臓がありえないほどの爆音を立てて脈打っているのを感じていた。顔が火のように熱い。

「何やってるのよ、私……」

数分後、お風呂から上がってきたレンは、私の貸した大きめのTシャツとスウェットパンツを身にまとっていた。小太りな彼には少しサイズがキツそうで、Tシャツの胸元や肩のラインがパンパンに張っている。それが、先ほどの全裸の記憶をさらに呼び起こさせた。

「……ありがと。シャンプー」
「お、おう。冷めないうちに早く服着なよ」

私たちはそれ以上、そのことには一切触れなかった。
けれど、その夜、狭い部屋に二つの布団を並べて横たわったとき、部屋を包んでいた空気は、完全に変わっていた。

子供の頃なら、一つの布団でくっついて寝ていたのに、今の私たちは、お互いにできるだけ距離を置こうと、壁際に身体を押し付けるようにして寝ていた。
暗闇の中、レンの少し低くて、太い呼吸の音が聞こえてくる。彼が寝返りを打つたびに、ドスッと床が微かに震えるような感覚があり、そのたびに私は、あの湯気の中で見た彼の厚い肉体を思い出して、布団の中でじっと目を開けていた。

彼もまた、眠れないようだった。モテない、垢抜けないと私が勝手に決めつけていた従兄弟は、あの夜、狭い浴室で私に裸を見られたことで、彼自身の中にある「男」を、強制的に自覚させられていたのかもしれなかった。

翌朝、駅の改札口でレンを見送ったとき。
彼は昨日と同じように、重そうなエナメルバッグを肩にかけ、少し猫背で立っていた。

「じゃあね、チカ姉。ありがと」

そう言ってはにかんだ彼の笑顔は、やっぱりいつもの、クラスで目立たないレンだった。
けれど、改札へと歩いていく彼の、少し太くて短い後ろ姿を見つめながら、私はもう二度と、彼のことを「ただの可愛い弟」としては見られないことを知っていた。

どんなに垢抜かなくて、モテないタイプに見えても、彼は確実に、一人の「男の人」へと成長していたのだ。

古い写真をアルバムに戻し、パタンと表紙を閉じる。
あの狭いアパートの、濃密な湯気の匂い。そして、見られて小さくなっていたレンの、あの熱く潤んだ瞳。
それは、私の青春の片隅に今も残る、少し不器用で、妙に生々しい、大切な夏の終わりの微熱の記憶だ。

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